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業務改善が定着する会社・しない会社の違いとは?現場が自ら改善できる組織のつくり方

「改善したはずなのに、いつの間にか元に戻っている」

「業務改善プロジェクトを実施した」
「新しい業務フローをつくった」
「マニュアルも整備した」
「新しいシステムも導入した」

それなのに半年後に現場を見ると、以前のやり方に戻っている。
そんな経験はないでしょうか。

業務改善というと、「どんな改善策を考えるか」に目が向きがちです。

しかし、私は物流・SCM領域で20年以上、物流センターの立ち上げや業務改善、WMS導入、プロジェクトマネジメントなどに携わる中で、改善案そのものよりも、その後の方が難しいと感じてきました。

良い改善案をつくることと、その改善が現場に定着することは別だからです。

そして、もう一つ重要なのが、
「誰が改善するのか」
という問題です。

外部の専門家や一部の管理職が改善を続けなければ回らない状態では、本当の意味で改善が定着したとは言いにくいでしょう。

私が業務改善で最終的に目指したいのは、
「改善された現場」ではなく、「自分たちで改善し続けられる現場」
です。

今回は、業務改善が定着する会社としない会社では何が違うのか、そして現場が自ら改善できる組織をどうつくっていくのかを考えてみます。

業務改善が定着しない会社に共通する3つの特徴

業務改善が定着しない理由は企業によってさまざまですが、現場を見ていると、いくつか共通するパターンがあります。

「改善策を決めること」がゴールになっている

一つ目は、
改善策が決まった時点で、プロジェクトが終わったようになってしまうこと
です。

現状分析をして、課題を洗い出す。
会議をして、改善案を決める。
新しい業務フローを作成する。
マニュアルをつくる。
ここまではしっかり行います。

しかし、本当に重要なのはその後です。
実際に新しい方法で仕事をしてみると、
「想定していたより時間がかかる」
「この工程では使いにくい」
「別の部署に負担が移ってしまった」
「この例外処理を想定していなかった」
といったことが必ず出てきます。

つまり、改善案は実行して初めて検証できる仮説でもあります。
一度決めた方法を完成形と考えるのではなく、
実行する → 確認する → 修正する
までを改善活動として考える必要があります。

改善を考える人が一部に限られている

二つ目は、
「改善する人」と「改善される人」が分かれてしまっていること
です。

経営者や管理職、改善プロジェクトのメンバーが改善案を考え、
「来月からこの方法に変えます」
と現場へ展開する。

確かに、この方が早く進む場合があります。
しかし、現場からすると、
「また何か始まった」
「今までのやり方の方が楽だった」
「なぜ変える必要があるのか分からない」
となることがあります。

ここで重要なのは、すべてを現場の多数決で決めることではありません。
現場の人たち自身が、何が問題なのかを理解しているか。

そして、
なぜこの改善を行うのかを理解しているか。

この二つです。
厚生労働省の業務改善に関する生産性向上支援でも、「指示」だけではなく「支援と促し」を行うことで、メンバーが主体的に参加し、改善活動が継続・定着しやすくなるという考え方が示されています。

改善を「やらされる仕事」にするのではなく、
自分たちの仕事を、自分たちで良くする活動
に変えていくことが重要です。

改善後の「振り返り」がない

三つ目は、改善策を実施した後に振り返らないことです。

例えば、
「作業手順を変更した」
「Excelを改修した」
「システムを導入した」
「帳票を変更した」
というところで終了してしまう。

しかし、本来確認したいのは、
「それによって何が変わったのか?」
です。

作業時間は短くなったのか。
ミスは減ったのか。
待ち時間は減ったのか。
残業は減ったのか。
現場は使いやすくなったのか。
逆に、新しい問題は発生していないか。

業務改善では、実施前にKPIを設定し、実施後に効果を確認することが重要です。改善を「やりっぱなし」にせず、定着と継続改善につなげることは、業務改善の基本的な考え方でもあります。

では、業務改善が定着する会社は何が違うのか?

私は、その違いを一言で表すなら、
「改善をイベントではなく、日常業務の一部にしているか」
だと考えています。

改善活動というと、
「改善プロジェクトを立ち上げる」
「改善月間を設ける」
「改善会議を開催する」
といった特別な活動になりがちです。

もちろん、最初はそれでも構いません。

しかし最終的には、
「ここ、やりにくくない?」
「この作業、本当に必要?」
「先月より時間がかかっているのはなぜ?」
「一度やり方を変えてみよう」
「変えてみたけど、どうだった?」
という会話が日常的に行われる状態にしていく。

つまり、
問題に気づく
→ 原因を考える
→ 改善する
→ 試してみる
→ 振り返る
→ また改善する
というサイクルが現場の中にある状態です。

では、その状態をどうつくるのでしょうか。

STEP1 まず「現場の事実」を見えるようにする

業務改善の第一歩は、
現状を正しく把握すること
です。

ここで注意したいのが、
「○○さんが遅い」
「この部署は効率が悪い」
「このシステムが使いにくい」
といった印象からスタートしないことです。

まず見るべきなのは「人」ではなく、仕事の流れと事実です。

例えば、
どこから仕事が始まるのか。
誰が処理しているのか。
何分かかっているのか。
どこで待っているのか。
何回入力しているのか。
どこで確認しているのか。
どこでミスが発生しているのか。
どこで手戻りしているのか。
こうした業務の流れを可視化します。

物流センターであれば、
入荷、検品、格納、補充、ピッキング、梱包、出荷という流れの中で、作業時間、移動、待ち、在庫差異、誤出荷などを確認していきます。

オフィス業務であれば、
申請、承認、転記、メール、Excel、システム入力などの流れを追っていきます。

業務改善の最初の仕事は、
「答えを出すこと」ではなく、「何が起きているのかを共通認識にすること」
です。

STEP2 「どう改善する?」の前に「なぜ?」を考える

課題が見えてくると、すぐに改善策を考えたくなります。

しかし、その前にもう一段掘り下げます。

例えば、
「入力作業に時間がかかっている」
という問題があったとします。

すぐに、
「RPAで自動化しよう」
「AIを使おう」
と考えるのではなく、
「そもそも、なぜこの入力が必要なのか?」
と考えます。

すると、
同じ情報を別システムにも入力している。
昔必要だった項目がそのまま残っている。
他部署からデータをもらえれば入力自体が不要になる。
といったことが見つかるかもしれません。

業務改善では、ECRSと呼ばれる、
なくせないか(Eliminate)
まとめられないか(Combine)
順番を変えられないか(Rearrange)
簡単にできないか(Simplify)
という考え方もよく使われます。特に「なくせないか」から考えることがポイントです。

非効率な仕事をそのまま自動化するより、仕事そのものをなくした方が効果が大きいこともあります。

STEP3 現場と一緒に改善策を考える

ここからが、改善を定着させるうえで重要な部分です。

外部の専門家や管理職が、
「正解はこれです」
と改善案を渡すだけではなく、
現場の人と一緒に考えます。
「この作業はなぜ必要だと思いますか?」
「どこが一番やりにくいですか?」
「この工程をなくしたら何が起きますか?」
「もし自由に変えられるなら、どうしたいですか?」
こうした問いを投げかけます。

現場の人は、毎日その仕事をしています。
外から見ただけでは分からない、
例外処理、暗黙のルール、顧客との約束、過去の経緯
を知っています。

だからこそ、現場の知識と改善の視点を組み合わせることが重要です。

そして、このプロセスにはもう一つ意味があります。

現場の人自身が、
「課題を見つけ、原因を考え、改善案を考える経験」
をすることです。

これが、後ほど大きな意味を持ってきます。

STEP4 100点を目指さず、小さく試す

改善案が決まったら、いきなり全社展開する必要はありません。

まず試します。
1つの部署。
1つの工程。
1つの商品。
1週間。
など、小さな範囲から始めます。

なぜなら、会議室で考えた改善案が、そのまま100点になることはほとんどないからです。

実際に使ってみると、
「ここは良かった」
「ここは使いにくかった」
「このケースだけ対応できない」
ということが分かります。
そこで修正します。

つまり、
改善案 → 試す → 振り返る → 修正する
です。

最初から完璧な仕組みをつくろうとするより、小さく試して改善する方が、結果として早く定着することがあります。

STEP5 改善の「やり方」そのものを現場に残す

ここが、私が最も重要だと考えている部分です。

外部の専門家が入り、
問題を分析して、
改善策をつくり、
仕組みを導入して、
成果を出す。

これだけでもコンサルティングとしては成立します。

しかし、外部の人がいなくなった途端に改善が止まってしまったらどうでしょうか。
新しい問題が発生するたびに、また誰かに答えを求めることになります。

だからこそ、改善活動を進める中で、
「改善した結果」だけではなく、「改善する方法」も組織に残す
ことが重要だと思っています。
現状を見る。
問題を整理する。
原因を考える。
改善案を考える。
小さく試す。
数字を確認する。
振り返る。
次の改善につなげる。

この一連の考え方を、管理者やリーダー、現場メンバーが身につけていく。

そうすると、外部支援がなくても、
「次はここを改善してみよう」
という動きが現場から生まれるようになります。

これが、私が考える「業務改善の定着」です。

「伴走」とは、ずっと隣にいることではない

最近、「伴走支援」という言葉をよく聞くようになりました。

私は、業務改善における伴走とは、
外部の専門家がずっと企業の代わりに改善を続けることではない
と考えています。

むしろ逆です。
最初は一緒に課題を整理する。
一緒に改善策を考える。
実行してみる。
一緒に振り返る。
その過程で、少しずつ現場側が自分たちで考える割合を増やしていく。

そして最終的には、
支援者がいなくても改善を続けられる状態をつくる。
そのための伴走です。

kanakoluでも、この考え方をベースに業務改善の伴走支援を行っています。サービスそのものにご興味がある方は、こちらで支援の考え方をご紹介しています。

ただし、この記事でお伝えしたいのはサービスそのものではありません。
重要なのは、
「誰かに改善してもらう」のではなく、「自分たちで改善できるようになる」
という考え方です。

➡ kanakolu「業務改善伴走サービス」

業務改善と人材育成は、本当は切り離せない

ここまで考えていくと、業務改善は単なる生産性向上活動ではなくなってきます。

私は、業務改善そのものが人材育成の機会になると考えています。
例えば、現場のリーダーに、
「この工程を改善してください」
と答えを渡すのではなく、
「今、この工程では何が問題だと思う?」
と問いかける。

データを見てもらう。
現場を観察してもらう。
原因を考えてもらう。
改善案を出してもらう。
実際に試してもらう。
結果を振り返ってもらう。

この経験を繰り返すと、
問題を発見する力
原因を考える力
仮説を立てる力
人を巻き込む力
実行する力
振り返る力
が育っていきます。

つまり、
業務改善を進めながら、人も育てる。
逆に、人が育つから、さらに業務改善が進む。

この循環をつくれると、改善活動は一過性のプロジェクトではなく、組織の力になっていきます。

DX・AIも「改善できる組織」があってこそ活きる

これは、DXやAIについても同じです。
「業務改善をしたいから、新しいシステムを入れよう」
「生成AIを使えば効率化できるのではないか」
という相談は今後さらに増えていくでしょう。

しかし、
業務そのものが整理されていない状態でデジタル化すると、複雑な業務をそのままデジタル化してしまう
ことがあります。

まず、
何のためにやっている仕事なのか。
どこにムダがあるのか。
どこを変えるべきなのか。
何をなくせるのか。
を整理する。

そのうえで、
「ここはAIに任せよう」
「ここは自動化しよう」
「ここは人が判断しよう」
と考える。

DXやAIも、改善活動の目的ではなく課題を解決するための手段です。
物流DXについては、関連記事の「物流DXは何から始めるべき?失敗を防ぐ物流センターDX推進の3段階ステップ」でも、この考え方を詳しく解説しています。

➡ 「物流DXは何から始めるべき?失敗を防ぐ物流センターDX推進の3段階ステップ」

業務改善が定着しているか?7つのチェックポイント

最後に、自社の業務改善が「定着する仕組み」になっているか、確認してみてください。

1. 現場の問題を数字や事実で確認している
2. 改善の目的を現場が理解している
3. 管理職だけでなく現場メンバーも改善案を考えている
4. 最初から完璧を目指さず、小さく試している
5. 改善前後の数字を比較している
6. 改善後に必ず振り返る機会がある
7. 新しい課題を現場自身が見つけるようになっている
1〜6は「改善活動の仕組み」です。

しかし、私が特に注目したいのは7番目です。
現場から、
「次はここを変えてみたい」
「この作業も改善できるのでは?」
という声が出るようになっている。

そこまで来ると、業務改善はかなり組織に根づいてきていると考えられます。

まとめ|目指すのは「改善された会社」ではなく「改善し続けられる会社」

業務改善では、短期的な成果ももちろん重要です。

作業時間が減った。
残業が減った。
ミスが減った。
コストが下がった。
こうした成果はしっかり確認する必要があります。

しかし、その先にもう一つの成果があります。

それが、
「自分たちで改善できる組織になったか」
です。

外部の専門家が答えを出し続けなくても、
現場が問題に気づく。
自分たちで原因を考える。
小さく試す。
結果を振り返る。
また改善する。

このサイクルが回り始めれば、会社には改善する力そのものが蓄積されていきます。

業務改善で本当に目指したいのは、
「改善された会社」ではなく、「改善し続けられる会社」。

私は、それが業務改善が本当の意味で「定着した」状態だと考えています。