【2026年8月最新】物流効率化法・中長期計画の作り方|記載例・提出期限を物流コンサルが解説

中長期計画は「書類作成」から始めない——まず自社物流の現状把握から

2026年4月、物流効率化法に基づく一定規模以上の事業者への規制的措置が施行されました。

一定規模以上の荷主などは「特定事業者」として指定され、中長期計画の作成・提出や定期報告などへの対応が必要になります。

特に2026年度は重要です。

特定事業者に指定された企業は、2026年10月末日までに中長期計画を作成し、事業所管省庁へ電子システムで提出する必要があります。

さらに国は、2026年8月18日に「中長期計画の作成方法と提出方法」に関する説明会を開催し、8月24日に説明会資料・動画を公開。8月28日には建設業向けの中長期計画記載事例も追加しました。製造業・卸売業・小売業などについては、すでに業種別の記載事例も公開されています。

では、実際に企業は何を準備すればよいのでしょうか。

「自社が対象なのか分からない」

「中長期計画と言われても、何を書けばいいのか分からない」

「倉庫や配送を物流会社へ委託しているので、自社では物流の実態が分からない」

こうした企業担当者の方も少なくないと思います。

この記事では制度そのものを説明するだけでなく、物流現場・物流改善の視点から、中長期計画をどのような順番で作っていけばよいのかを分かりやすく整理します。

➡ 改正物流効率化法に関する各種お知らせ

物流効率化法の「中長期計画」とは?

物流効率化法では、すべての荷主や物流事業者に物流効率化へ取り組む努力義務が課されています。

そのうえで、一定規模以上の事業者については「特定事業者」として、中長期計画の作成や定期報告など、さらに具体的な義務が設けられています。

中長期計画は、単なる「今年度の改善計画」ではありません。

国の説明では、毎年度の提出を基本としながらも、計画内容に変更がない場合は5年に一度の提出とされています。

つまり、

「10月末までに書類を埋めれば終わり」

というものではなく、

「これから数年間、自社の物流をどのように改善していくのか」

を整理する計画と考えた方がよいでしょう。

2026年度は「10月末」が重要

2026年度については、特定事業者に指定された企業は10月末日までに中長期計画を提出する必要があります。

8月末現在で考えると、残された期間はそれほど長くありません。

だからこそ、様式を書き始める前に、

「どのような物流があるのか」

「どこに課題があるのか」

「どの数字を把握できているのか」

を整理することが重要になります。

➡ 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

そもそも自社は中長期計画の対象?

荷主企業について、よく出てくる数字が、

年間取扱貨物重量9万トン

です。

取扱貨物重量が指定基準以上の場合、「特定荷主」として中長期計画や定期報告などの対象になります。

ただし、この「9万トン」は少し注意が必要です。

特定第一種荷主と特定第二種荷主

物流効率化法では、大きく、

第一種荷主:主に運送を手配する側

第二種荷主:主に貨物を受け取る・引き渡す側

という考え方があります。

特定第一種荷主については、その年度に貨物自動車運送事業者や貨物利用運送事業者へ運送させた貨物重量が基準となります。

一方、特定第二種荷主については、自らの事業に関して運転者から受け取る貨物、または運転者へ引き渡す貨物などが対象になります。

したがって、

「自社ではトラックを手配していないから関係ない」

とは限りません。

例えば、仕入先や取引先が運送を手配している場合でも、自社が貨物を受け取る着荷主として第二種荷主に該当する可能性があります。

また、第一種荷主と第二種荷主の取扱貨物重量は、単純に会社全体で一括して考えるのではなく、それぞれの立場ごとに算定することが示されています。

9万トン未満なら物流効率化法と無関係?

ここも非常に重要です。

9万トン未満だから、物流効率化法と無関係というわけではありません。

9万トンは、特定荷主として中長期計画や定期報告などが義務付けられる指定基準です。

一方、物流効率化法による物流効率化への努力義務は、発荷主・着荷主を含む荷主全般が対象となります。

したがって、9万トン未満の中小・中堅企業であっても、

荷待ち時間の削減、荷役作業の効率化、積載効率の向上などについて、自社物流を見直していく必要があります。

中長期計画には何を書くのか?

では、実際の中長期計画には何を記載するのでしょうか。

国は、大きく次の3つの視点を示しています。

・運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物重量の増加
・運転者の荷待ち時間の短縮
・運転者の荷役等時間の短縮

これらについて、

①実施する措置
②具体的な措置の内容・目標等
③実施時期等
④参考事項

を記載します。

例えば物流現場で考えると、

「トラック予約受付システムを導入する」

だけではなく、

何を改善するために導入するのか

まで考えることが重要です。

例えば、

現在、午前9時~11時に入荷車両が集中しているため、予約受付を導入し車両到着時間を平準化する。平均荷待ち時間を把握し、段階的な削減を目指す。

という形です。

これなら、

課題 → 施策 → KPI → 目標

がつながります。

中長期計画を物流改善へつなげるためには、このつながりを意識することが重要です。

国が公開している「記載事例」から分かること

中長期計画について、

「具体的にどの程度書けばいいのか分からない」

という企業向けに、国は記載事例を公開しています。

現在、

・製造業
・卸売業
・小売業
・連鎖化事業者

について記載例が公開されており、それぞれ、

「取組が進んでいる企業向け」



「これから取組を深める企業向け」

の2種類が用意されています。2026年8月28日には建設業向けの事例も追加されています。

ここは非常に参考になるポイントです。

つまり、現時点ですべてのKPIやデータを完璧に管理できていなければ中長期計画を作れない、ということではありません。

製造業向けの記載例でも、「これから取組を深める企業」については、現状把握や代表拠点での試行など、段階的に取り組むイメージが示されています。

重要なのは、

現時点で何が分かっているのか

そして、

これから何を把握し、どのように改善していくのか

を明確にすることです。

➡ 中長期計画書・定期報告書の記載事例集

➡ 経済産業省 中長期計画書(様式第3)記載見本集

物流コンサルの視点で考える「中長期計画の作り方」

ここからが、実際に企業が取り組む際に重要な部分です。

私は、中長期計画の様式をいきなり書き始めるよりも、次の7ステップで整理する方が進めやすいと考えています。

STEP1 自社物流の現状を把握する

最初に、

「自社にはどのような物流があるのか」

を整理します。

例えば、

入荷

原材料・商品の保管

生産・加工

製品保管

出荷

顧客への納品

という物流フローです。

倉庫や配送を物流会社へ委託している場合も含めて整理します。

この段階では、細かな改善策を考える必要はありません。

まず物流全体を見えるようにすることが重要です。

STEP2 物流量と物流フローを整理する

次に数字を把握します。

例えば、

・年間出荷重量
・年間入荷重量
・出荷件数
・入荷件数
・トラック台数
・拠点別物流量
・納品先別物流量
・商品別物流量

などです。

重量が直接管理されていない企業でも、国は商品マスタ、容積、トラック最大積載量、売上・仕入金額などを活用した換算方法を示しています。

「物流量が分からない」こと自体が、最初に見つかる物流課題になる場合もあります。

STEP3 荷待ち時間・荷役等時間を把握する

次に重要なのが、

トラックがどれくらい待っているのか

荷積み・荷卸しなどにどれくらい時間がかかっているのか

という把握です。

国は「荷待ち時間」と「荷役等時間」をそれぞれ定義しており、定期報告では原則として分けて計測する考え方が示されています。

例えば、

入場

受付

待機

バース接車

荷役開始

荷役終了

退場

という時刻を記録するだけでも、物流現場がかなり見えるようになります。

最初から大きなシステムを導入しなくても、代表的な拠点や時間帯から計測を始める方法もあります。

STEP4 改善すべき課題を特定する

データを集めたら、

「何が問題なのか」

を整理します。

例えば、

「午前中に車両が集中している」

「入荷受付に時間がかかっている」

「荷卸し後の検品に時間がかかっている」

「パレット規格が統一されていない」

「小口配送が多く積載効率が低い」

などです。

大切なのは、感覚だけではなく、数字と現場の両方を見ることです。

STEP5 改善施策とKPIを決める

課題が分かったら、次に改善施策と、その効果を確認するためのKPIを決めます。

例えば、次のように整理できます。

① 車両が特定の時間帯に集中している場合
予約受付の導入や納品時間帯の分散を検討します。
KPIとしては、平均荷待ち時間や時間帯別の車両台数などが考えられます。

② 荷役時間が長い場合
パレット化や荷役方法の見直しを検討します。
KPIとしては、1台当たりの平均荷役時間などを設定します。

③ 積載効率が低い場合
発注ロットや出荷ロット、配送頻度などを見直します。
KPIとしては、積載率や1台当たりの輸送量などが考えられます。

④ 入荷車両が特定の時間帯に集中している場合
取引先や物流会社と納品時間帯を調整し、入荷の平準化を検討します。
KPIとしては、時間帯別の入荷車両台数やピーク時間帯の車両数などを確認します。

⑤ 検品作業に時間がかかっている場合
検品方法の見直しや、バーコード・デジタルツールの活用などを検討します。
KPIとしては、1件当たりの検品時間や検品作業時間の削減率などが考えられます。

ここで重要なのは、改善施策だけを決めて終わらせないことです。

例えば「パレット化を進める」「予約受付を導入する」というだけでは、実際に物流が改善したのか判断できません。

「何を改善するのか」
「どの数字で効果を確認するのか」
「いつまでに、どの程度改善するのか」

までセットで考えることで、中長期計画が実際の物流改善につながっていきます。

STEP6 中長期計画へ落とし込む

ここまで整理できれば、中長期計画の作成はかなり進めやすくなります。

つまり、

現状

課題

改善策

KPI

目標

実施時期

を国の様式へ落とし込むイメージです。

逆に、この整理をせずに様式から書き始めると、

「とりあえずパレット化」

「物流DXを推進する」

といった抽象的な計画になりやすくなります。

STEP7 提出後も定期的に進捗を確認する

中長期計画は、提出して終わりではありません。

特定事業者は、指定を受けた翌年度以降、毎年度、取組状況等を定期報告する必要があります。荷主等については、荷待ち時間等の状況も報告項目となります。

例えば毎月または四半期ごとに、

物流量
荷待ち時間
荷役時間
積載率
改善施策の進捗

などを確認する仕組みをつくっておくと、中長期計画が日常の物流改善につながります。

「計画を作ること」が目的になっていないか?

制度対応で起こりやすいのが、

「提出すること自体が目的になる」

状態です。

特に注意したいのが、

・数字の根拠がない
・物流部門だけで作っている
・物流会社へ丸投げしている
・現場の実態を確認していない
・KPIが設定されていない
・提出後に見直さない

というケースです。

中長期計画を作ることそのものが物流改善ではありません。

重要なのは、

現状を把握し、課題を見つけ、改善し、結果を確認すること。

計画書は、その活動を整理するためのものと考える方がよいでしょう。

物流会社・3PLに委託している企業こそ確認したい

製造業・卸売業・小売業では、

「倉庫も配送も物流会社に任せているので、自社は物流効率化法とはあまり関係ない」

と思われているケースがあります。

しかし、必ずしもそうではありません。

国が示している荷主区分でも、物流子会社や3PLへ運送を委託するケースを含め、第一種荷主・第二種荷主の考え方が整理されています。

また、荷待ち時間についても、自社管理施設だけでなく、寄託契約先が管理する施設について状況を把握し、改善につなげていくことが望ましいとされています。

だからこそ物流委託先とは、

「年間どれくらい動いているのか」

「荷待ちは発生しているか」

「荷役にどれくらい時間がかかっているか」

「どこに改善余地があるか」

といった情報を共有できる関係をつくることが重要になります。

物流を委託することと、物流管理そのものを手放すことは別です。

CLO(物流統括管理者)も「物流部門だけ」の話ではない

特定荷主・特定連鎖化事業者には、物流統括管理者の選任も求められます。

物流統括管理者には、単に物流現場を管理するだけでなく、開発・調達・生産・販売・在庫・物流などの部門連携、設備投資、デジタル化、標準化、取引先や物流事業者との調整など、幅広い役割が求められています。

これは非常に重要なポイントです。

物流問題は、物流部門だけでは解決できないことが多いからです。

例えば出荷量が特定日に集中している原因が営業部門の受注条件にあったり、小ロット配送が多い原因が発注方法にあったりすることもあります。

物流効率化を進めるには、SCM全体で物流を見る視点が必要になります。

中小・中堅企業は何から始めればよい?

年間9万トンに満たない企業の場合、特定荷主としての中長期計画提出義務はありません。

しかし、物流改善という観点では、取り組むことはほとんど同じです。

まずは、

①自社の物流量を把握する
②物流フローを書き出す
③荷待ち・荷役時間を測る
④課題を見つける
⑤物流会社と改善について話す

この5つから始めてみてください。

特に、

「物流費は分かるが、物流量は分からない」

「物流会社に任せているため、現場がどうなっているのか分からない」

という企業は、一度自社物流を見える化するだけでも、多くの気づきが出てきます。

法対応の有無にかかわらず、物流の可視化は物流コスト削減、在庫改善、業務効率化、物流DXなどの出発点になります。

まとめ|中長期計画を「提出書類」で終わらせない

2026年度、特定事業者にとっては10月末の中長期計画提出が一つの大きな期限になります。

しかし、今回の制度対応を、

「また提出書類が増えた」

だけで終わらせるのは、少しもったいないと感じています。

せっかく物流量や荷待ち時間、荷役時間を調べるのであれば、

現状把握

物流量・物流フローの可視化

課題抽出

改善施策

KPI設定

実行

定期的な確認

という物流改善のサイクルにつなげていく。

中長期計画を**「自社物流を見直すきっかけ」**として使うことが重要ではないでしょうか。

法律への対応はゴールではありません。

最終的には、物流現場が効率化され、物流会社との関係が改善し、自社でも継続的に物流を管理・改善できる状態をつくることが大切です。

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物流効率化法への対応を、物流改善につなげるために

kanakoluコンサルティングオフィスでは、法律そのものの法的判断ではなく、物流現場・物流改善の専門家という立場から、制度対応を実際の改善活動へ落とし込む支援を行っています。

例えば、

「自社が何から調べればよいのか分からない」

「物流会社へ委託していて、物流の現状が見えていない」

「荷待ち時間・荷役時間をどう把握すればよいか分からない」

「物流量や物流KPIを整理したい」

「中長期計画を作るだけでなく、実際の物流改善につなげたい」

といった企業様について、物流現状診断、物流フロー・物流KPIの整理、物流センター改善、物流会社との調整、WMS・物流DX、物流改善プロジェクトの伴走などをご支援しています。

制度上の判断や法的解釈については、所管行政機関や必要に応じて法律の専門家へ確認しながら、現場で実際に何を改善するかを一緒に整理していくことが可能です。

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