物流DXは何から始める?荷主企業の6割が法改正対応に未着手|現場データの見える化から始める3ステップ

荷主企業の物流DXは、まだこれから

「物流DX」という言葉を耳にする機会は、ここ数年でかなり増えました。

WMS(倉庫管理システム)、トラック予約受付システム、AI、IoT、データ分析ツールなど、物流現場で活用できるデジタル技術も増えています。

一方で、

「物流DXに取り組みたいが、何から始めればよいのか分からない」

「システム導入には費用がかかるので踏み切れない」

「そもそも自社の物流の実態を十分に把握できていない」

という企業も少なくないのではないでしょうか。

2026年9月にアステリア株式会社が公表した「物流DX実態調査2026」は、こうした荷主企業の実態を考えるうえで興味深い内容でした。

同調査は、製造・卸売・小売業などの荷主企業に勤務し、物流・倉庫・在庫・配送管理等に関わる206名を対象に実施されています。

その結果、改正物流法への対応について**「特に行っていない」と回答した人が60.2%**にのぼりました。

また、物流現場でのアプリ活用率は4%未満にとどまる一方、モバイル端末による現場負担の軽減については47.1%が期待しているという結果も示されています。

この結果を見て私が特に気になったのは、単に「物流DXが進んでいない」ということではありません。

それ以前に、物流改善の出発点となる現場データそのものを十分に把握できていない企業が多いという点です。

➡ 「改正物流法」により規制強化された「荷主企業」の物流DX実態調査~アプリ活用は4%未満の一方、モバイル端末によるDXには47%が期待〜

「DX以前」に、物流現場の実態が見えていない

今回の調査では、物流現場のさまざまな情報について「記録・管理していない」とする回答が見られます。

たとえば、

トラックの入退場・待機時間
→ 54.4%が記録・管理していない

荷役作業時間
→ 48.5%が記録・管理していない

バース予約・接車スケジュール
→ 51.0%が記録・管理していない

という結果です。

これは物流改善を考えるうえで非常に重要なポイントです。

例えば、

「トラックの荷待ち時間を減らしたい」

と思っていても、現在どのくらい待っているのか分からなければ、どこから改善すればよいのか判断できません。

「荷役作業を効率化したい」

と思っていても、荷積み・荷卸し・検品などにそれぞれ何分かかっているのか分からなければ、改善効果を測ることもできません。

物流改善では、

現状把握 → 課題特定 → 改善 → 効果確認

という流れが基本になります。

その出発点となるのが「データ」です。

物流効率化法でも「現状を把握する」ことが重要になっている

これは物流DXだけの話ではありません。

物流効率化法への対応でも、荷待ち時間・荷役等時間や積載効率などの状況を把握することが重要になっています。

国が示している荷主の判断基準でも、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮に加え、取組状況の把握やデジタル技術の活用、物流データの標準化などが示されています。

また、特定荷主等には、指定を受けた翌年度以降、毎年度の定期報告が求められ、荷待ち時間等についても一定の方法で計測・報告することになります。

ここで大切なのは、

「法律で求められているから数字を取る」

だけで終わらせないことです。

せっかくデータを取るのであれば、そのデータを自社の物流改善にも活用する。

私はこの考え方が非常に重要だと思っています。

➡ 定期報告 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

▶関連記事: 「【2026年8月最新】物流効率化法・中長期計画の作り方|記載例・提出期限を物流コンサルが解説」

物流DX=システム導入ではない

物流DXというと、

「WMSを導入しなければ」

「トラック予約システムを導入しなければ」

「AIを活用しなければ」

と考えてしまうことがあります。

しかし、システム導入そのものが物流DXの目的ではありません。

大切なのは、

「自社の物流のどこに問題があり、それをどう変えたいのか」

を先に考えることです。

順番としては、

現場の課題を知る

必要なデータを決める

データを記録する

見える化する

改善する

効果を確認する

必要に応じてシステム化する

です。

業務が整理されていない状態で高額なシステムを導入しても、これまで行っていた非効率な業務をそのままデジタル化してしまう可能性があります。

だからこそ私は、物流DXを検討する企業ほど、まず「今の物流がどうなっているのか」を整理することが重要だと考えています。

中小企業は「小さな物流DX」から始めればいい

今回の調査でもう一つ興味深いのが、物流現場でのアプリ活用率が4%未満である一方、47.1%がモバイル端末による現場負担軽減に期待しているという点です。

また、DX導入の障壁として最も多かったのが「初期費用の高さ」でした。

だからといって、最初から大規模なシステムを導入する必要はありません。

むしろ中小・中堅企業では、小さく始めて、効果を確認しながら広げていく方が現実的です。

例えば、次の3つから始めることができます。

STEP1 まず一つだけ「測る」

最初からすべての物流データを集めようとすると、現場の負担が大きくなります。

まずは、自社で問題になっている項目を一つ選びます。

例えば荷待ち時間なら、

「到着時刻」
「受付時刻」
「荷役開始時刻」
「荷役終了時刻」
「出発時刻」

などを記録します。

なお、物流効率化法における「荷待ち時間」「荷役等時間」には具体的な算定方法が示されているため、法対応を目的とする場合は国の定義を確認したうえで設計することが重要です。

STEP2 データを見える化する

次に、集めた数字をグラフなどで見えるようにします。

最初から高度なBIツールを導入する必要はありません。

Excelなどでも十分です。

例えば荷待ち時間を、

「曜日別」
「時間帯別」
「運送会社別」
「バース別」

などで整理してみます。

すると、

「月曜日の午前中に集中している」

「10時台だけ待ち時間が長い」

「特定の入荷で荷役時間が長くなっている」

といった傾向が見えてくることがあります。

STEP3 改善して、もう一度測る

データから課題が分かったら改善します。

例えば10時台に車両が集中しているのであれば、納品時間帯を分散する。

荷卸しに時間がかかっているのであれば、荷姿やパレット化を検討する。

検品に時間がかかっているのであれば、事前出荷情報の活用や検品方法を見直す。

こうした施策は、国が示す荷主の判断基準とも方向性が合っています。

そして改善後に、もう一度同じデータを測ります。

記録 → 見える化 → 改善 → 再測定

このサイクルを回すことが重要です。

デジタル化した後に「何に使うか」が重要

紙の日報をタブレットに変えた。

Excelをクラウド化した。

スマートフォンで入力できるようにした。

もちろん、これらも重要な第一歩です。

しかし、それだけでは物流DXとは言い切れません。

例えば、

荷待ち時間をデジタルで記録する

だけで終わるのではなく、

荷待ち時間を記録する

時間帯別に分析する

車両が集中する時間帯を特定する

納品時間を分散する

再び荷待ち時間を測る

改善効果を確認する

ところまでつなげる。

ここまで来ると、データが現場の意思決定に使われ始めます。

私は、物流DXで本当に重要なのはこの部分だと考えています。

「紙をデジタルに変える」のではなく、「データを使って現場の判断や仕事のやり方を変える」。

それが物流DXの本来の目的です。

法対応と物流DXを別々に考えない

物流効率化法への対応と物流DXを、それぞれ別のプロジェクトとして進めようとしている企業もあるかもしれません。

しかし、両者には共通する部分が多くあります。

物流効率化法では、荷主に対して、積載効率の向上等、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮などへの取組が求められています。これは一定規模以上の特定荷主だけの話ではなく、荷主全般に努力義務が課されています。

一方、物流DXでも、

物流量を把握する。
荷待ち時間を把握する。
荷役時間を把握する。
物流コストを把握する。
データから課題を見つける。
改善効果を測定する。

ということが重要です。

つまり、

法対応のための現状把握と、物流DXのためのデータ整備は、別々のものではありません。

法改正を「提出書類を作るための対応」で終わらせるのではなく、自社の物流を見える化するきっかけとして活用する。

その方が、企業にとっても意味のある取り組みになるのではないでしょうか。

➡ すべての荷主の対応 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

物流会社に委託している企業こそ「自社の物流データ」を確認する

製造業・卸売業・小売業では、倉庫運営や配送を物流会社や3PLへ委託しているケースも多いと思います。

その場合、

「物流会社が管理しているから大丈夫」

と思ってしまいがちです。

しかし、

「物流会社がデータを持っている」ことと、「荷主企業が自社の物流を把握している」ことは同じではありません。

物流会社へ委託していても、

どのくらいの商品を動かしているのか。

どこで荷待ちが発生しているのか。

どの作業に時間がかかっているのか。

物流コストはなぜ増減しているのか。

どのKPIを改善すべきなのか。

といったことを荷主側でも把握できる状態をつくることが重要です。

国の制度でも、荷主には発荷主だけでなく着荷主も含まれます。また、3PL事業者等についても、第一種荷主から物流効率化の取組への協力を求められた場合には対応する努力義務が位置付けられています。

物流会社に任せることと、物流管理まで丸ごと任せきりにすることは別です。

➡ よくあるご質問・言葉の定義 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

まとめ|物流DXは「一つの数字を取る」ところから始められる

今回のアステリアの調査結果を見て、

「日本企業の物流DXは遅れている」

と捉えることもできます。

しかし、私は少し違う見方もできると思っています。

現場向けアプリの利用率はまだ低い。

一方で、モバイル端末による現場負担の軽減には約半数が期待している。

つまり、

「変えたいと思っている。でも、何から始めればよいのか分からない」

という企業も多いのではないでしょうか。

物流DXは、大規模なシステム投資から始める必要はありません。

まず、現場で困っていることを一つ決める。

その実態を数字で把握する。

見える化する。

改善する。

もう一度測る。

この小さなサイクルから始めることができます。

そして、この積み重ねが物流効率化法への対応だけでなく、生産性向上、物流コスト削減、現場負担軽減にもつながっていきます。

物流DXの第一歩は「何のシステムを入れるか」ではなく、「自社の物流について何を知る必要があるか」を考えること。

まずはそこから始めてみてはいかがでしょうか。

物流DX・物流改善についてお困りの企業様へ

kanakoluコンサルティングオフィスでは、システム導入そのものを目的とするのではなく、物流現場の現状把握から課題整理、物流KPIの設定、業務改善、WMS・物流DX、物流会社との調整、改善プロジェクトの伴走まで支援しています。

「物流DXに取り組みたいが何から始めればよいか分からない」

「物流会社へ委託しているため、自社の物流実態が見えていない」

「荷待ち時間・荷役時間をどのように把握すればよいか分からない」

「物流効率化法への対応を実際の物流改善につなげたい」

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